大和当帰の葉を使用。薬草のまちから生まれた入浴ハーブ
2023.01.25
奈良県に日本屈指の薬草のまちがあるのをご存知でしょうか。irodori kintetsu(いろどりきんてつ)ではウェルネスフーズUDAの協力のもと、 大和当帰(やまととうき)とよもぎの葉を使った入浴ハーブをセレクト商品として取り扱っています。 この商品が生まれた背景や作り手のこだわり、薬草のまちの歴史をご紹介します。
奈良県宇陀市は日本屈指の薬草のまち
標高400〜500mの山間地が広がる宇陀には、古来より生薬や漢方の原料となる植物が自生。古くは飛鳥時代から宮中行事で薬狩りを行なっていた場所であり、
近代では置き薬を商う家が多かったことから製薬会社の創始者を多数輩出。日本最古の私設薬草園が存在することもあり、日本屈指の薬草のまちとして知られるようになりました。
今回ご紹介する「いろどりのかおり湯」は、宇陀に本拠地を置くウェルネスフーズUDAが製造した、大和当帰とよもぎの葉を使った入浴ハーブ。
お風呂に入れるだけで心安らぐ爽やかな香りに包まれて体がぽかぽかに。女性におすすめしたい商品となっています。


薬草のまちを守り続けるキーパーソン
歴史ある薬草栽培地の宇陀ですが、近代では農薬を使用する大規模農業の発展と、中国産の薬草に押さたことで、薬草農家が衰退していました。 その過去を憂い、薬草のまちを守っていくための活動を続けているひとりが、ウェルネスフーズUDA代表の山口 武さんです。

山口さんは実家の山口農園を継ぐために、47歳で県庁職員から農家へと転身した人物。農薬や化学肥料を使う農業に疑問を抱き、無農薬有機栽培に積極的に取り組んできました。
「周りからは採算が取れないと散々言われましたが、戦前までの日本は無農薬を基本としてきたはずです。
できないはずがないという想いで、野菜の育て方や害虫・病気について独学で勉強。
ハウスごとにデータを取って日野菜の生育状況を観察・分析するうちに、畑や作物ごとの土壌の作り方がわかってくるようになりました」
そう話す山口さんにとって大きな発見だったのが、害虫には決まった植物しか食べない習性があることです。
「あるとき小松菜を育てていたハウスに、その前に作付けしていたほうれん草が一株だけ遅れて芽を出していたのを発見。
しかもハウス内には小松菜を好む害虫がたくさんいたのですが、ほうれん草だけ全く食害を受けていなかったのですね。
小松菜はアブラナ科、ほうれん草はヒユ科の植物です。この体験から、害虫は特定の科の植物を好み、他の科の植物は食べないことに気づくことができました」
そこから山口さんは、作物を連作しない独自の栽培方法を発想。
葉野菜のように1ヶ月ほどで収穫できる野菜を中心に次々と栽培作物を変えていくことで、害虫は食べるものがなく餓死してしまうようになったのです。
このような有機栽培法を確立した山口農園では、160棟ものハウス栽培で、化学肥料を使わず、
米糠や海藻・家畜の糞を自社で発酵させた堆肥を使った有機農法を実践。また農薬を一切使用していないにも関わらず、
ハウス内には害虫が発生せず、食害のない健康で美しい野菜を育てることができるようになりました。
こうした農業改良の功績を認められ、山口さんは令和元年に緑白綬有功章を受賞。
秋篠宮殿下から表彰を受けています。


なおirodori kintetsuでは、山口農園の無農薬・有機農法で作られた野菜を使ったスープも開発。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
現在の山口さんは、息子さんに山口農園の経営を引き継ぎ、宇陀の薬草発祥の地としての文化を守っていく活動に注力。
ウェルネスフーズUDA代表として、薬草を活用したまちづくりに取り組んでいます。
生薬として知られる大和当帰を栽培
60代から薬草の生産・活用に取り組み始め、ウェルネスフーズUDAを設立した山口さん。 宇陀市薬草協議会で地元有志が結成した「ときわクラブ」とも協力体制を結び、薬草の新しい生産方法の開発にも取り組んできました。 その中でも特に力を入れてきたのが大和当帰です。大和当帰は主に奈良県で栽培されてきたセリ科の多年草。 白く愛らしい花をつけ、葉は深い鮮やかな緑色。婦人病や冷え症の改善に用いられてきた漢方薬・当帰芍薬散の原料として有名です。

大和当帰の畑に伺うと、山口さんはもちろんのこと、ときわクラブ会長の萬世春康さんをはじめとする皆さんが作業中。 種まきから収穫まで全て手作業ですし、農薬を使わないため生い茂る雑草を抜くのも一仕事。ですが皆さんいきいきと畑仕事をされています。

萬世さんによれば、大和地方に野生していた深山当帰(みやまとうき)を栽培化したものが大和当帰のルーツ。
中山間地である宇陀は、湿度が高い木陰や傾斜地を好む薬草の生育に適した土地だと話します。
「しかし薬草は生育が遅いのが難点。大和当帰も収穫まで2年ほどが必要なため栽培農家自体が減っていたのですが、
私たちの活動で徐々に生産量を増やすことができるようになりました。
現在は耕作放棄地を所有者から無償で借り受け、薬草栽培を広げています(萬世さん)」

なお、大和当帰は根の部分が生薬として活用されてきたことから、薬用以外の利用が長く法律で認められていませんでした。 しかし2012年より葉の部分が医薬外扱いとなり有効活用が進められるように。 この状況を受け山口さんが運営するウェルネスフーズUDAでは、ときわクラブから大和当帰やよもぎなどの薬草を仕入れ、 健康茶やアロマスプレー、また入浴用ハーブに加工して販売するようになりました。 irodori kintetsuで販売している「いろどりのかおり湯」もそのひとつなのです。
温もり、整い、和む、いろどりのかおり湯
「いろどりのかおり湯」は、宇陀産で農薬を使わずに育てられた大和当帰とよもぎをブレンドした入浴ハーブです。 自然乾燥ですと色香りが悪くなることが多いハーブですが、ウェルネスフーズUDAでは機械乾燥で温度を変えながら時間をかけて水分を抽出。 鮮やかな色と香りを残した状態での商品化を実現しています。


「当社の入浴ハーブは、奈良県内の温泉施設で活用されて好評をいただいています。 irodori kintetsuさんを通じてさらに広い地域の方々に、大和当帰をはじめとした宇陀の健康植物の魅力が伝わると嬉しいですね。 またそれにより、地域の生産者が『作ってよかった!』とやりがいを感じられるようになると嬉しく思います」と山口さん。

大和当帰はセロリのような香りがする植物ですが、乾燥させることで柔らかな香りに変化。 「いろどりのかおり湯」ではよもぎの爽やかな香りと相まって、心を整え和ませてくれる芳香が楽しめます。 また入浴後もぽかぽかした状態が長く続くのも魅力。寒がりさんにぜひ体験いただきたい入浴ハーブです。
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取材先:ウェルネスフーズUDA(山口農園グループ)
奈良県宇陀市榛原大貝332
